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Innovative Solutions of Strategy & Marketing

集合知

集合知は、オープンソース・ソフトウェア、web2.0、wiki、クラウドソーシングなどで典型的に用いられる概念で、単純化すれば「個人の知より集団の知のほうが勝る」という考え方です。しかし、集合知の概念はそれを用いる人や状況によって異なります。英語においては、“collective intelligence”と“wisdom of crowds”いう二つの言葉が用いられており、その違いの定義も一般化されていません。ただし、後者は日本語として「群集の知恵」と訳される場合もあります。ここでは、集合知を以下のように整理して考えます。

まず、集合知は「量的集合知」と「質的集合知」に分けることが出来ます。そして、後者はさらに2つに分けることが出来ます。

【量的集合知】:計量予測型集合知

これは、「東京に電柱は何本あるか?」「あそこに見える電柱の高さは何メートルか?」など、調べてみなければ正確な正解がわからないような問題を予測する能力を指します。回答者が多く集まると、個々の回答者はバラバラな答えをしますが、その個々の予測値を全体として集めたときのの平均値は驚くほど実際の正解に近くなります。回答者が多くなればなるほど、その予測は正確さが増します。個々のバラバラな知が、全体としてはものすごい天才、あるいはその道のエキスパートのような振る舞いをします。

【質的集合知】

①選択肢拡散型集合知

アンサーパーク的なインターネットサービスに代表される集合知です。ある質問者が、「こんな場合はどうしたら良いでしょうか?」と質問を投げかけ、それに対し、多数の回答者たちが「こんな方法はどうですか?」といった解決方法の案を挙げていきます。回答者は、自分では思いつかなかった多様な案を得ることができ、問題解決のレベルが向上します。これは、単に回答者の数が多くなるだけでは解決のレベルは上がらず、回答者の多様性が幅広くなることによって、知のレベルが向上します。これは、個々の知がバラで存在し、その中から特定の知を選択するという意味では、全体としてひとつのまとまった「インテリジェンス」ではなく、「個別インテリジェンスの集合」と言えるかもしれません。しかし、個々の案が挙げられるプロセスで、他人の案に触発されて別の案を思いつくということもあります(この効果を狙った発想手法がブレインストーミングやブレインライティングです)。したがって、個々の知は完全に独立しているかというと、そうでもなく、他者の知に影響を受けているという意味では「ゆるやかに一体的な集合知」と言うこともできます。

②精緻化型集合知

wikiやオープンソース・ソフトウェアに代表されるように多数の人の知によってあるテーマが上書き的に深堀りされ、その精度が増していく集合知です。例えばwikiにアップされた記事は、初回アップ当初は簡単な記述であることがよくあります。しかし、その後多数の人たちが上書き的に知を重ねていくことで、その記事の内容は詳細かつ正確になっていきます(もちろんその過程で間違うこともありますが)。これもやはり参加者の数が多くなれば精度が向上します。しかし、選択肢拡散型集合知と違うのは、一定のカテゴリーを越える多様性があっても精度の向上に寄与しないかもしれないということです。これは、どちらかというと当該テーマに詳しいエキスパートによる専門的な知の集合が求められます。また、参加者同士の共同作業(コラボレーション)というのも大きな特徴です。

クラウドソーシングは、ある企業が直面する課題の解決手段などを多数のエキスパート(専門家)や顧客・消費者・ユーザー(彼らもある意味使う側のエキスパートと言えます)に求めます。これは、解決の手段という選択肢を幅広く求める「個別インテリジェンスの集合」という意味において選択肢拡散型集合知です。しかし、技術的課題の解決を支援するクラウドソーシングによるオープン・イノベーションは、多様な視点での解決手段というだけでなく、その分野の専門性という意味でのエキスパートの集合知も求められます。ただし、想定していた技術とはまったく異なる技術や方法での解決が出現する可能性も考えると、多様性も必要です。また、ユーザーにアイデアや意見を求めるタイプにおいて、「この製品の長さはどのくらいが良いか」などのかなり絞り込んだ質問をする場合は、計量予測型集合知の要素が入ってきます。しかし、この手の質問は単なるアンケートと変わらないので、従来型のマーケティング・リサーチのパラダイムであり、あえてクラウドソーシングと言うべきものではないでしょう。

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SECIモデル(ナレッジ・マネジメント)

SECIモデル(SECIプロセス)とは、一橋大学の野中郁次郎と竹内弘高らが提示した広義のナレッジ・マネジメントのコアとなるフレームワークです。のちに、野中は紺野登とさらにそのモデルを精緻化させています。

SECIモデルでは、知識変換モードを4つのフェーズに分けて考え、それらをぐるぐるとスパイラルさせて組織として戦略的に知識を創造し、マネジメントすることを目指します。

【共同化】Socializaiton

  • 暗黙知から暗黙知へ

共同化とは、経験を共有することによって、メンタルモデル(認知的=精神的暗黙知)や技能(技術的=身体的暗黙知)などの暗黙知を創造するプロセスです。暗黙知を共有する鍵は“共体験”です。経験をなんらかの形で共有しないがきり、他人の思考プロセスに入り込むことは難しいとされています。

【表出化】Externalization

  • 暗黙知から形式知へ

表出化とは、暗黙知を明確なコンセプト(概念)に表すプロセスです。暗黙知がメタファー、アナロジー、コンセプト、仮説、モデルなどの形をとりながら次第に形式知として明示的になっていくプロセスです。野中らは、このプロセスは知識創造の真髄であるとしています。表出化は、対話(ダイアローグ)・共同思考によって引き起こされます。その際、帰納法や演繹法といった論理思考も形式化の有力な方法論となります。

【連結化】Combination

  • 形式知から形式知へ

連結化とは、形式知同士を組み合わせてひとつの知識体系を作り出すプロセスです。この知識変換モードは、異なった形式知を組み合わせて新たな形式知を作り出します。データベースとネットワークを用いて情報を体系的な知識へと変換することは、連結化の典型例です。

【内面化】Internalization

  • 形式知から暗黙知へ

内面化とは、形式知を暗黙知へ体化(身体化)するプロセスです。行動による学習と密接に関連したプロセスです。形式化されたナレッジが、新たな個人へと内面化されることで、その個人と所属する組織の知的資産となります。

SECIプロセス

SECIプロセス

SECIモデル

SECIモデル

 

<知識変換の「場」>

組織として、知識の創造、共有、活用、蓄積を活発化させるために、個々のナレッジを共有したり、共同でナレッジを創造したりするための結節点が必要となります。この結節点を、「場」と言います。豊かな知識創造・知識経営が出来るかどうか、「場」のデザインにかかってきます。「場」は、SECIモデルの各フェーズに沿って、4つのパターンに分けることができます。

【創発場】Originating Ba

  • 共同化に対応

経験、思い、信念、考え方などの暗黙知を共有する場です。

【対話場】Dialoguing Ba

  • 表出化に対応

各自が対話(ダイアローグ)を通じて暗黙知を言語化・概念化して形式知に変換するための場です。

【システム場】Systemizing Ba

  • 結合化に対応

形式知を相互に移転・共有・編集・構築し、新たな体系の形式知へと統合する場です。

【実践場】Exercising Ba

  • 内面化に対応

形式知を個々人の暗黙知へと身体化するための場です。ここでは、単なる形式知の伝達ではなく、形式知に束ねる形で何らかの経験的要素や人間的要素を提供することで暗黙知としての移転・発展を促すことができます。サービス業などで特に重要な場です。

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暗黙知 / 形式知

暗黙知と形式知は、マイケル・ポランニーが『暗黙知の次元』で示した「知識(ナレッジ)」の認識論的な分類です。

ポランニーは、「私たちは、言葉に出来るより多くのことを知ることができる」と言い、言語などの明示的・形式的表現では伝達不可能な知を暗黙知と呼んでその存在を指摘し、言語などの明示的・形式的表現での伝達が可能な知を形式知と呼びました。

暗黙知は、特定状況に関する個人的な知識で、形式化(言語化、データ化、情報化)したり他人に伝えたりするのが難しいものです。一方、形式知は明示的なもので、論理的な伝達・表現手段によって伝達することが可能なものです。

暗黙知と形式知の特徴

暗黙知と形式知の特徴

ポランニーは、人が他人の顔を見分けることが出来るが、その見分け方を具体的には説明できない、という例で暗黙知と形式知の違いを例示しています。

別の例で言えば、一橋大学の野中郁次郎と竹内弘高は、長嶋茂雄は素晴らしいバッターだったが、どうしたらそんなに打てるのかを言葉でうまく説明はできなかったと言っています。

もう少し別の例を示したいと思います。

人は運転の仕方を教習所の座学で習って知識を得ていても、始めてクルマに乗っていきなりスムーズに運転することは出来ません。実際に経験してはじめて気づくことが多いからです。特にマニュアル・シフトの操作は、事前に操作方法(形式知)を知ることは必要ですが、アクセルとクラッチとシフト・ノブを動かす微妙なタイミングと深さは、何度もエンストしてみてはじめてベストなバランスを習得できるものです。そうして習得した知識を今度新たに免許を取得しようとしている人に教えようとした場合、やはりいくら親切にアクセル、クラッチ、シフト・ノブの話をしても、新人ドライバーは一度はエンストするでしょう。言葉では伝えきれない知識があるのです。

このように身体的運動を伴う暗黙知に関しては、いくら言語化して説明しようとしても伝えきれないものが残ります。しかし、暗黙知は身体的な暗黙知だけではありません。認知的な暗黙知というものがあります。認知的な暗黙知とは、別の表現をすれば、「メンタル・モデル」です。これは具体的には、スキーマ、(思考の)フレーム、世界観、パースペクティブ、信念、視点などが挙げられます(野中郁次郎・竹内弘高【著】『知識創造企業』)。これらは、それそのものを直接的に言語化することは難しいものの、言語によるコミュニケーションを重ねることでしだいに形式化が可能となります。その過程では、しばしばアナロジーやメタファーが用いられます。

暗黙知と形式知の分類は、以下の図のようになります。

形式知と2種類の暗黙知

形式知と2種類の暗黙知

この暗黙知と形式知という概念は、野中郁次郎らの提起した広義のナレッジ・マネジメント、あるいは「知識創造」という経営理論において非常に重要な概念です。野中らは、この暗黙知と形式知の相互変換を通して組織の知の強化が図られると考え、その実践プロセスをSECIといううモデルにして提示しました。

狭義のナレッジ・マネジメントと言われるものは、企業内あるいはそのステークホルダー間での形式知の効率的な活用にスポットを当てています。ビジネス・インテリジェンス・ツールもそのひとつと言えるでしょう。こうした狭義のナレッジ・マネジメントは「知識経営」というよりは、「知識管理」というほうがふさわしい表現かもしれません。それに対し、野中らの提示する広義のナレッジ・マネジメントは、個人の中で起こる暗黙知の創出も射程に含めた、「組織的知識創造」の理論です。

クラウド・ソーシングに関しても、実態は形式知のマス・コラボレーションです。暗黙知は、その特性上、マス化・流通化が難しいと言えます。

ここに企業がフェイスtoフェイスで顔を合わせてコラボレーションや交流をすることの意義がありあす。LAN、WAN、インターネットなどのネットワークに載せてエクスチェンジ可能なナレッジは、形式知です。ネットワーク上でエクスチェンジ可能なナレッジはいわば「情報」です。メンタル・モデルは取引・流通されません。異なる業界のプレイヤーや異なる段階の流通プレイヤーとネットワークを介してナレッジをエクスチェンジする場合、それは技術情報や特許情報などの情報や販売情報などのデータです。そこには、異業種・異業界ならではの“視点”、“ものの見方”、“思考のフレーム”といった暗黙知は取引されません。これらは流通チャネルに載せて取引することが難しいからです。しかし、革新的なブレークスルーやビジネス・イノベーションというものは、異なる視点やものの見方、異なる暗黙知の交差点に生まれます。たとえば、イタリアのメディチ家が多様なジャンルの個性豊かな芸術家を各地からフィレンツェに呼び寄せて交流が生まれた結果、ルネサンスという飛躍的な芸術開花が起こりました(Frans Johanson【著】“The Medici Effect”)。ネットワークを介して形式知をエクスチェンジすることは漸進的な課題解決には繋がりますが、革新的なイノベーションには繋がりにくく、有用ではありますが限界もあります。したがって、暗黙知レベルでのナレッジのエクスチェンジを促すこと、フェイスtoフェイスでのナレッジのコラボレーションや交流をすることは、形式知のエクスチェンジのみでは成し遂げられない革新的なブレーク・スルーやイノベーションの可能性を飛躍的に高めます。

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デコンストラクション

デコンストラクション(deconstruction:脱構築)は、元来、フランスの哲学者ジャック・デリダの造語で、同一人物のテクストから一義的な意味だけを読み取らずに、背後にそれと対立するもうひとつの意味を見出し、後者によって前者を“相対化”してゆくという思考の方法論です。この方法論によって、デリダはヨーロッパの伝統的な「形而上学」の解体を試みました。デリダのデコンストラクションは、ポスト構造主義の重要な概念となりました。

Innovation Studio Japanでは、デリダのデコンストラクションの概念とは違い、「既存の事業・商品・サービスを構成要素(コンポーネント:component)に解体・分解し、他の分野のコンポーネントとの組み換え・結合(リコンビネーション:recombination)を行うことで、新しい価値を創造する」という手法をデコンストラクションと呼びます。

コンポーネントを他の(自社の/他社の)事業・製品・サービスに応用できないか(移動できないか)を検討し、新結合を図ろうとすることをディペイズマンと呼びます。デコンストラクションは、解体にはじまり結合に終わる一連の流れのセットを指し、ディペイズマンはその一部に含まれる概念です。

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ディペイズマン

ディペイズマン(depaysement) は、「エクリチュール・オートマティック(自動記述)」と並ぶシュルレアリスム芸術(美術・文学)の主要な方法論です。

「depaysement」は動詞「depayse」からくる名詞で、動詞「depayse」は、「de:分離・剥奪」と「pays:国、故郷」から構成されています。

ここからディペイズマンの元々の意味は「ある国から引き離して他の国へ追放すること」を指します。

そして、シュルレアリスム芸術の文脈では、「本来の環境から別のところへ移すこと、置き換えること。本来あるべき場所にないものを出会わせて違和・驚きを生じさせること」と解されています。

シュルレアリストたちは、ディペイズマンの起源をロートレアモン伯爵の『マルドロールの歌』(1869)に登場する一文、「そしてなによりも、ミシンとコウモリ傘との、解剖台のうえでの偶然の出会いのように、彼は美しい!」に見出していました。

シュルレアリスム美術の代表例としては、ルネ・マグリットやサルバドール・ダリの作品が挙げられます。たとえばマグリッドの有名な作品には、昼の青空の下に夜の街が描かれた『光の帝国』、青空の下に広がる大海原の上に浮かぶ大きな石という構成の『石』などがあります。

Innovation Studio Japanでは、新しい価値を創出する(広義のビジネス・イノベーション)ための手段として、「ある分野で用いられている要素を別の分野に応用・適用・結合する行為ないし試み」をディペイズマンと呼びます。この「要素」には材料・部品・製品・生産プロセス・ロジスティクスやSCMなどの製造業のビジネス構成要素だけでなく、収益化や課金システムの仕組みなどの収益モデル、「誰に、何を、どうやって」提供するかの仕組みとしてのビジネスモデルないし事業システム、およびその構成要素、さらには「コンセプト」などが含まれます。つまり、物理的な「モノ」だけでなく無形の「方法」や「概念」も非常に重要な要素と考えます。とくに第3次産業における新サービス・新事業開発では、無形資産としての「仕組み」、「方法」、「概念」の新結合は重要です。また、製造業においても、無形資産は外部から見えないため模倣されにくく(コンセプトはわかりますが)、強力な競争優位の源となります。ディペイズマンのわかりやすい例としては、電子商店街(サイバーモール)や新型サーカスが挙げられます。サイバーモールは、従来型の小売商業施設の“テナント・リーシング”というビジネスモデルをインターネットに移動・応用しました。シルク・ドゥ・ソレイユ(「太陽のサーカス」の意)は、サーカスにミュージカル・オペラ・バレエ・演劇などの舞台芸術の要素を取り込みました。

ディペイズマンという考え方は、「リコンビナント・イノベーション(組み換え結合型の革新)」を実現するための方法論と考えることができます。

「無からの創造」や「個人の天才によるゼロからの創造」というものは神話に過ぎず、革新的な創造は「異なる分野においてすでに存在する要素同士のこれまでに無かった新しい組み合わせ」から生じることが、これまでの様々な研究成果で明らかになっています。「何をどこにディペイズ(マン)するか」は、新たな価値を生み出す上でキーとなります。

カテゴリー:ALL, イノベーション, クリエイティビティ

マーケット・イノベーション

マーケット・イノベーション(市場イノベーション)は、Innovative Studio Japanが考えるイノベーションの概念です。

イノベーションは、日本語で言えば「革新」ですが、1958年の『中小企業白書』で「技術革新」という表記が用いられて以来、しばしば「技術」に特化した革新と誤って用いられています。

企業は、製品やサービスといった「価値」を市場(買い手=消費者や購入業者)に提供しています。技術とは、製品を作る際の一要素です。技術を革新したとしても製品が革新される保証はなく、製品の機能を革新したとしても価値が革新される保証はありません。最終的には市場に受け入れられる「価値」を革新できるか否かが重要です。価値を革新することは、すなわち市場を革新することに繋がります。なぜなら、価値が有るか無いかは市場で受け入れられるか否かで判断されるものだからです。価値と市場は表裏一体の関係にあると言えます。それをひとつの言葉で言い表すと、「市場価値」となります。市場が受け入れるに値する価値です。そのように考えたとき、技術の革新の最終的な目標は、価値を飛躍的に向上させ、市場を開拓することです。すなわち、「技術革新→価値革新=市場革新」という流れになります。

ところで、価値革新を英訳すれば「バリュー・イノベーション」となります。このバリュー・イノベーションという言葉は、W.チャン・キム&レネ・モボルニュが著書『ブルー・オーシャン戦略』において独自の意味で用いて以来、彼らのコンテクストでの意味がなじんでいます。その独自の意味とは、「差別化と低コスト化を同時に実現する価値の革新」という意味です。したがって、価値の革新ではあっても、彼らの文脈では、独自性があっても高コストであってはならない、という条件がつけられています。これに対し、「差別化と低コスト化」にとらわれず、とにかく最終的に買い手の感じる価値が飛躍的に高まるようなイノベーションを、Innovative Studio Japanでは、「マーケット・イノベーション」と呼びます。マーケット・イノベーションとは、キム&モボルニュの定義とは違い、広義の「価値革新」と同義です。キム&モボルニュの概念と区別するために用いる用語です。価値と市場は表裏一体の関係にあるため、価値を革新することは、すなわち市場を革新することになるため、「バリュー」を「マーケット」と呼び替えました。

さて、上述のようにイノベーションについて考えたときに、イノベーションを「狭いイノベーション(Small Scope Innovation)」、「中くらいのイノベーション(Middle Scope Innovation)」、「広いイノベーション(Large Scope Innovation)」に分けることができます。そして、それらすべてを包摂する概念が「ビジネス・イノベーション(Business Innovation)」です。ビジネス・イノベーションは、一般的なイノベーションがしばしば「技術」に特化したイメージを抱きやすいことに鑑み、技術的な革新に限らず広く「革新」を指す言葉として用います。その主な構成は以下の通りです。

【Business Innovation】:ビジネス・イノベーション

Small Scope Innovation

  • 技術イノベーション:technological innovation
  • 製品イノベーション:product innovation
  • (サービス・イノベーション:service innovation)

Middle Scope Innovation

  • 生産プロセス・イノベーション:production process innovation
  • ビジネス・プロセス・イノベーション:business process innovation
  • 収益モデル・課金システム イノベーション:revenue stream innovation / charge system innovation

Large Scope Innovation

ただし、Small Scale InnovationとLarge Scale Innovationは排他関係にあるのではなく、Large Scale InnovationがSmall Scale Innovationのいくつかを包含する関係にあります。

たとえば、収益モデル・イノベーションはビジネスモデル・イノベーションのひとつの構成要素と言えますし、製品イノベーションやサービス・イノベーションはバリュー・イノベーション/マーケット・イノベーションの構成要素となり得ます。

また、上に記した以外にもイノベーションのバリエーションは考えられます。特にMiddle Scope Innovationは、「ビジネスモデルの構成要素」として考えると幅広く考えられます。

カテゴリー:ALL, イノベーション, ストラテジー, マーケティング

リコンビナント・イノベーション

リコンビナント・イノベーション(Recombinant Innovation)は、カリフォルニア大学デイヴィス校のアンドリュー・ハーガドンが主張するイノベーションの本質を指した概念です。

ハーガドンは、イノベーションはすでに存在する異なる分野の要素同士の新たな結合によって引き起こるものだと主張し、それをリコンビナント・イノベーションを呼びました。ハーガドンの考えに従えば、「イノベーション(の本質)=リコンビナント・イノベーション」ということになり、リコンビナント・イノベーションというタイプのイノベーションがあるというわけではありません。

ハーガドンは、プロダクト・イノベーションの例としてエジソンのラボを紹介し、同じ空間で活動する様々な分野の開発と実験に取り組む技術者と、様々な分野での受託経験、そこで交差する様々な分野のナレッジこそが、質・量ともに優れたプロダクトを生み出したことを挙げています。

さらにプロセス・イノベーションの例として、フォード・システムが完成するプロセスを説明し、ヘンリー・フォードによる効率的にシステム化された作業の仕組みと画期的なな工作機械の発想と実用化は、すでに他の業界分野で用いられていた様々な製造方法を参考にし、それらを統合的に組み合わせた結果だと述べています。フォードが参考にした他の業界としては、ミシン製造、農業用の刈り取り機、缶詰食品メーカー(ケチャップのハインツやキャンベル・スープなどが代表的)、シカゴの精肉工場などです。

ハーガドンの考えに基づけば、「(独力の才能による)発明」ではなく「独創的な組み換え結合」を目指すことによって、また既存の枠組みの中で考えること(thinking inside the box)のでも、箱の外で考えること(thinking outside the box)のでもなく、他の複数の箱の中で考えること(thinking in other boxes)によって、イノベーションの達成は飛躍的に向上す考えられます。

リコンビナント・イノベーション

リコンビナント・イノベーション

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構造的空隙

構造的空隙(structural holes)とは、シカゴ大学ビジネススクールのロナルド・S・バートが『競争の社会的構造:構造的空隙の理論』で提示した社会ネットワーク理論の一概念です。

構造的空隙は、マーク・グラノヴェターの「弱い紐帯」ほど重要で有益をもたらすという「弱い紐帯の強さ」の概念を発展させたもので、バートは「構造的空隙の強さ」と表現しました。バートは、得られる情報の量と質とネットワークの維持コストという観点から、企業が競争優位を確立するためのネットワーキングのあるべき方針として、構造的空隙を埋める絆の重要性を提示しました。

バートによると、ネットワーキングによって有益な情報を効率的に得るためには「重複しないコンタクト」が重要だと言います。たとえば企業間のネットワークにおいて、自社から複数のクラスター(グループ)へリンクが伸びている場合、そのリンクは同一クラスターへは重複せず、出来る限り別々のクラスターに分散すべきだ、と言います。同一のグループへ複数のリンクを張った場合、得られる情報も重複してしまいます。それぞれのリンクを維持するコストは、リンク先が別々のクラスターのノードに分散していても同一クラスターへ重複していても基本的には変わりません。したがって、リンク維持コストに対する得られる情報利益は、リンク先が同一クラスターへ重複するほど低下してしまいます。逆にリンク先を分散させることで、同じコストで重複しない多様な情報を獲得することが出来ます。

構造的空隙

構造的空隙

カリフォルニア大学デイヴィス校のアンドリュー・ハーガドンは、イノベーションを実現するために企業が採るべき行動として構造的空隙を埋めるネットワーキングの重要性を指摘しています。

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弱い絆の強さ

「弱い絆の強さ(弱い紐帯の強さ)」“The strength of weak ties”は、1973年にスタンフォード大学の社会学者マーク・グラノヴェターが発表した同名の論文で指摘した社会的ネットワークの概念です。

グラノヴェターは、 就職先を見つける際に役にたった“つて”を調査し、 調査対象者のうち16%の人が「しょっちゅう」会っている人の“つて”で仕事を得たのに対し、84%の人が「時たま」あるいは「ごくまれに」しか会わない人の“つて”で就職していたことをつきとめました。この事実から、 身近な人の情報は自分の情報と重なっている部分が多く、有益な情報は「あまり身近でない知人」が多くもたらすという結論を導き出しました。

これは、「弱い紐帯」で結ばれた比較的疎遠な関係は、「強い紐帯」で結ばれた緊密な関係よりも、有益な情報をもたらすと一般化されました。

この考え方は、社会的ネットワーク理論において非常に重要な発見となっただけでなく、企業のイノベーションや創造性研究の分野においても、「弱い絆」の集合がもたらす創造性は、同一組織内や似たような環境にいる近しい存在の集合による創造性よりも、優れた結果をもたらすという一連の研究へと発展しました。

弱い絆の強さ

弱い絆の強さ

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破壊的イノベーション

「破壊的イノベーション」(Disrupthive Innovation)とは、C.M.クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』原題:“The Innovator’s Dilemma”で最初に提示し、続く『イノベーションへの解』、『明日は誰のものか』の3部作を通して詳細に明らかにしたイノベーション・モデルです。

【持続的イノベーション】 Sustaining Innovation

クリステンセンによれば、既存の顧客の要望に忠実に改良を組み重ねていくのが“優良企業の”イノベーションの基本方針であるが、そうした要望拝聴と製品改良を繰り返していくと、いつしか製品の性能のほうが顧客の望む性能レベルを超えてしまい、高コスト・高価格・過剰スペックの製品が出来上がってまうと言います。顧客の要望を忠実に拝聴した結果であるのに、顧客の要望をオーバーしてしまうという逆説的な事態を、クリステンセンは「オーバーシューティング(過剰解決)」と呼びました。このように、消費者や顧客が望む性能進化のスピードよりも技術進化のスピードが常に上回ると考えられています。このような既存の価値観の元での直線的な改良によるイノベーションを「持続的イノベーション」と呼びます。

【破壊的イノベーション】 Disruptive Innovation

「持続的イノベーション」の対極的な概念が「破壊的イノベーション」です。「破壊的イノベーション」には2種類あるとされています。ただし、クリステンセンは、2種類のイノベーションが組み合わさった破壊的イノベーションのタイプが多いと指摘しています。

<破壊的イノベーションの2類型>

【ローエンド型破壊的イノベーション】

ローエンド型破壊は、既存市場において大きなシェアを持ちながらもオーバーシューティングに陥った優良企業の高価格・複雑な製品に対し、より低価格や簡便性を実現する“破壊的技術”によって、これまで空白になりつつあったローエンド市場に参入します。そして、ローエンド市場で圧倒的なシェアを獲得する間に改良を重ね、性能的にも上位市場の顧客のニーズを満たすレベルになりハイエンド市場へも少しずつ進出し、次第に旧来のプレイヤーの製品はより上位市場へと逃げるように対象市場を狭めていき、駆逐されていきます。なお、“破壊的技術”は、必ずしも高度な技術ではなく、むしろ単純化・小型化などをもたらす技術的革新が多いと考えられています。

【新市場型破壊的イノベーション】

新市場型破壊は、新たな破壊的技術を用いた製品を、既存市場の一部としてのローエンド市場ではなく、新しい価値軸に基づいた、これまでと異なる新規市場に参入します。クリステンセンは、これを「無消費」すなわち消費のなかった状況に対抗するイノベーションであるとしています。たとえば、ソニーのトランジスタラジオやウォークマンは、小型化という技術的イノベーションを新しい価値の軸で市場投入したことにより新しい市場を創造しました。

また、川上のサプライヤーや川下の顧客やエンドユーザーまでの同一製品をつなぐネットワークを「バリューネットワーク」と呼びます。このバリューネットワークは、ひとつの市場ニーズに向けての“価値共同体”であり、同じ目的を共有するネットワークです。既存の“優良企業”は、市場規模の大きい既存事業のバリューネットワークを捨てて新しいバリューネットワークを選択することはなかなかできません。しかし、新市場型破壊のプレイヤーは、破壊的技術を生かす新しいバリューネットワークを開拓し、そこにこれまで消費されていなかった新しい市場を創造します。クリステンセンは、「この新しいバリューネットワークは、新製品が従来よりシンプルで形態性に優れ、製品コストが低いために実現する」と述べています。そして、既存市場での上位企業が新市場の旨みに気づき、既存のバリューネットワークから飛び出して新しいバリューネットワークに基づく新市場に参入しようとしたときには、すでに先に進出していた破壊的イノベーターに大きなアドバンテージをつけられてしまいます。

【イノベーションのジレンマ

このように、既存市場でハイエンド市場へ向けて「持続的イノベーション」を繰り返していくイノベーターが、破壊的技術によってローエンド型破壊や新市場型破壊をもたらす破壊的イノベーターに駆逐されてしまう現象を「イノベーターのジレンマ(邦訳ではイノベーションのジレンマ)」と言います。

2つの破壊的イノベーションと持続的イノベーション “イノベーションのジレンマ”

2つの破壊的イノベーションと持続的イノベーション “イノベーションのジレンマ”

カテゴリー:ALL, イノベーション, ストラテジー, マーケティング

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